一昨年に買ったっきり積んでいたのだけど、マリみて再読したついでに読んでみた。
時系列は思いっきり巻き戻って高校の入学式、マリみて1巻よりスタートが前である。
文章そのものはここまでマリみてを書いてきた今野さんらしく熟練した技で安定していてすいすい読める。
ただし、キャラクター造形、男子高校生の描写という面ではかなり違和感あり。
祐麒が将来どういうポジションを得ているかは「子羊たちの休暇」、「真夏の1ページ」、「涼風さつさつ」あたりでわかる。
そこに至るまでの出発点がこの巻だ。
彼の周りの人間関係がどういう風に出来上がっていくかを見られるのは興味深い。

マリみて世界だと、短編では時折別のキャラを用いて描かれるが、祐巳をはじめとした薔薇ファミリーはその他の人間から「悪意」を向けられることは少ない。
薔薇さまという存在がわりと不可侵というのが元にあるからだろうね。
それも蓉子や祐巳が意図して変えようとしたことによって今後緩やかに変わっていくのだろうけれど。
この「お釈迦さま」においては祐麒はそんな風に守られてはいない。
むしろ敵だらけというか、一匹狼な存在としてのスタートを余儀なくされるというのは男の子だから、かな。
かわいい子ほど試練を与えようというような、今野先生の祐麒に対する愛情がうかがえる。
それを乗り越えていく祐麒はかっこいいのだ。

もっとも、大枠として祐麒の行動、心情は適切に描けていると思う反面、細かい所では祐麒という高校1年生男子の描写には少々違和感あるのも事実。
ちょっとナヨナヨしているというか、泣き虫すぎないか、というか。
男の子は心では泣いていても表ではめったなことでは涙を見せない、と思う。
くだらないプライドと言うなかれ、そういうものである。
この辺は女性作家ならではの感覚かもしれない。

祐巳はほんの少しだけ出番があり、2年生の1学期という状況(「チェリーブロッサム」あたり)を考えればあそこまで落ち着いているのはやや妙な感じもする。
弟相手ならば「姉」は強くあれるのか、はたまた、最新刊では3年生の薔薇さまになっている「どっしりとした」安定感に引っ張られたのか、まあ両方だろう。

マリみてほど強烈に惹かれる面白さはないけれど、ある意味気軽に読めるかもしれない。
ぼちぼち揃えていくことにしよう。
今のところ6巻まで出ているようだ。

マリみての姉弟(きょうだい)版とあとがきで書いてあるのがちょっと面白い。
姉=祐巳、弟=祐麒の姉弟だから、マリみての「姉妹版」とはならないわけだね。
管理人のみが読めるようにする

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