2010/09/01 こまごまと訂正。
視聴者としての視点を考えてみよう。
主人公たちキャラクターに感情移入して見る以上、そこにはどうしてもキャラへの思い入れが入るので、客観的に見るのは難しい。
特に今回のようにキャラクターの行動や心理の判断がつきにくい場合はそうだろう。
客観的に見ることが難しいこととは今回の9話の中ではどんなことだろうか?
9話の感想一覧
① 原作よりも踏み込んだアレンジ:学園黙示録 HOTD 9話①
② 8話オリジナル部分とのつじつま合わせについての考察・余談:学園黙示録 HOTD 9話②
③ 視聴者としての視点で抵抗を感じること:学園黙示録 HOTD 9話③

内面についていろいろ考察してはいるが、孝は基本的には常識的で善良な普通の少年だ。(*1)
主人公である彼は読者にとって感情移入の対象になる。
そして、彼とヒロインたちを含めたチームは生きるために必要な現実的な行動を大枠では選びつつも、ありす・ジークを助けるといったことも行っており、過酷な状況にあっても人間性を失わない。
そんな彼らの中の二人、孝と冴子。
その二人が現実的で打算的な側面を持っている、というのは心理的にあまり受け入れやすいことではない。
視聴者としてとしてキャラクターたちに思い入れが深まれば深まるほどなおさらである。
だからこそ、見ていて抵抗を感じるのだろう。
客観的な視点がとりづらくなる。

じゃあ抵抗を感じるのはどんなことなのか。

・ 孝が自分が生き残るためという打算をもって冴子の心にある闇(*)を受け入れたこと
好意もあるが、打算が確実にある。
(* 心の中にある闇=正当な理由なく力をふるい、それに悦楽を感じること)

・ 冴子が自分の闇に対する虞・不安を鎮めるために孝に抱かれたこと(一応未確定だが実際にあったという前提で進める)
神社内で起きたことはまさにこれだと思っている。
好意もお互いにあるだろうが、そこにあるのはどちらかというと対処療法的で一時しのぎな逃避行動にも似たものだ。
一時異性と身体を重ねることで心の中の不安や虞を忘れ、その場限りであってもほんの少しの安らぎを得ようとする行為。

そこに孝への愛情はない。
いや正確には愛情はあるけど、この場合の性行為は愛情からのものではないということだ。
冴子は好意からではなく、癒される対象として孝を選んだに過ぎない。
一方の孝は冴子に対して好意はもちろんあるし、彼女の闇を救ってあげたい、という思いは持っているだろう。
闇を打ち明けた冴子に近づき、真剣な表情で手を重ねたカットからもそれは伺える。
しかし同時に、性的欲望・劣情からの行為でもあることは否定できない。
冴子の顔と身体を魅力的だと思っていることは透けブラにオタオタしながらもガン見していたことからも明らかだ。
冴子が愛情以外のものを理由として抱かれようとしたことは感じ取っただろうが、そこで躊躇せず身体を重ねたのは性的欲望が後押ししたと考えていいだろう。
本当にストイックに徹するなら、抱きしめるだけにとどめておくのではないかと思う。
こういう動機のもとに異性に抱かれることはふだんの凛とした冴子には似つかわしくないが、それだけ彼女にとっては心の中にある闇が大きいということだろう。
他人から見ればそこまで悩むことではないように見えるかもしれない。
しかしこの場合は冴子にとって心の闇がどういう存在なのかが問題なので、他人から見た感覚は全く意味をなさない。
もしくは…冴子の精神は本当はそこまで強くない、と見ることもできる。
弱いことを自覚しているからこそ、常には凛とした態度を保ち、剣術に磨きをかけ、強くあろうとしているのではないだろうか。

・ 孝に抱かれてなお、冴子は自分の闇に対する虞を消し去ることができなかった。
そこまで冴子は心が弱いのか? という驚きと落胆。
上記の理由で他人の感覚は意味をなさないとしても、これまで強さを保っていた彼女がそこまでの弱さを見せることへの感情は止めようがない。

・ 冴子が自分の闇を含めて全てを受け入れてくれた孝に対し、今後もずっとその状態であることを心から望み、孝から快諾を得たこと。
彼女は自分の心にある闇に絶望し、生きる理由を失っていた。
孝はその彼女に「孝のため」という生きる理由を与えてくれたということ。

孝はありのままの本当の自分を受け入れてくれた。
その孝のために、孝を生き残らせるために彼女は本当の自分であり続け、狂気の力をふるう。
逆に言えば、それ以外では使わないということだろう。
孝は自分が生き残るために彼女の闇を引き受けて立ち直らせ、狂気を開放して戦うように仕向けた。
そのような打算があったとしても、彼女にとって生きる理由を与えてくれたことの方が意味が大きい。
そしてその打算すらも彼女の生きる理由に直結している(孝を生き残らせることが冴子が生きて戦う理由だから)のだから、 孝の打算を責める理由がない。
結果としてそんな打算を許してしまう冴子への失望感。

・ 孝が冴子を自分の女としたことに対する嫉妬
単純に嫉妬もあるか。
この場合、既に主人公イコール視聴者ではなくなってしまっている。

さて、「自分の女」と書いたが、果たしてそう言い切れるのか?
・ 孝が冴子を自分の女にしたと言い切れる理由
冴子に対して宣言した内容を吟味してみよう。
原作で傍点を打って強調しているセリフがある。
「ぼくを死なせるな!」 
ぼくのため 
全ての罪と共に本当のお前であり続けろ!!」
つまり、孝を生き残らせること、孝のために本当の自分でいること、心の闇を開放して孝のために戦うことを生きる理由としろ、と言っている。
孝のために生きろ、といっているわけで、これは冴子を自分のものと告げることと同義だろう。
決め手は冴子の胸を力いっぱいわしづかみにしたこと。(*)
これは冴子を自分のものとして直接彼女の身体に宣告したことに他ならない。
胸をつかんだことには理由があるのだ。
(* 当然、そこまでの行為をして許されていること自体、孝と冴子が既に身体を重ねたことの傍証になる)

…というか、「自分の女であることをその身体に直接わからせる」なんて、改めて書くとものすごくエロいね。
真意に気づかなければ意味不明でシュールなシーンにも見えるのだが、理由がわかってしまうとこれはヤバい。
神社内での出来事を理詰めで考えた時もかなりリビドーにくるものがあったけど。
だって、本意ではないのに自分ではどうしようもできなくて、つかの間の癒しを求めて身体を預けてくるんだよ?
しかも、ふだんは凛として強くてむやみに人に頼ることなどしない人が。
言ってみればそれは「美しいものが自分の中の弱さという醜いものに負けて堕ちていき、輝きを失っていくこと」だから。
そりゃ興奮しようというもので。
え、変態だ? 望むところ!

閑話休題。

・ 麗との兼ね合い
元々孝は麗に惚れていて、永が死んだことで麗からの(これまた打算含みの)好意も受けている。
これは望んでいた状況だから、孝自身もまんざらではなく、6話ではキスを果たした(しつこいようだが一応未確認)。
8話においては麗と共に死のうとする決意も見せた。
…その直後であるのに、冴子を抱いて自分の女としたのは自分勝手すぎないか? ということ。
事実上、二股かけていると言っていいからだ。
孝も罪悪感はある。(原作5巻で麗に対して動揺していた態度から推測)
が、本音としては孝は両方モノにしたいと思ってるんじゃないかと思っている。
緊急事態だったとはいえ、冴子を抱いて自分のものにした一連の行動に躊躇がないからだ。
麗のことを気にするそぶりが全くなかった。
…うん、正直言って視聴者としてみると「主人公爆発しろ」だね、これは。

しかしながら、ぶっちゃけた話、むしろこれは非常に興奮する。
NTRに近い感覚かな。
いやそれもあるけれど、もっと強いのは黒い欲望を隠さずに表に出す快感、それを実現させることのカタルシスだね。
だって最高だろ?
終わってしまった世界の中で、<奴ら>という化け物をぶっとばして生きていく快感。
良い女を複数はべらして、彼女たちの身も心も自分のものにする。
憧れの先輩は既に自分のものとした。
そして、周りにいる他の女たちも全て我がものとしてみたい。
片想いしていた幼なじみ、自分に惚れている幼稚園からの知り合い、無防備にフェロモンをまき散らす先生。
インモラルであっても、それは男子として心の中に存在する抗いがたい欲求だ。(全員かどうかは知らない。少なくとも私はそうだ)
その気持ちを隠さないこと、実現していくことはこれ以上ない快感である。
それを描いている物語が面白くないわけがない。

それになんというか、孝も冴子も、そういった生々しい人間的なところがむしろ魅力的だと思うのだ。
完璧ではないし、視聴者の願望のままに動く幻想の存在ではない。
でもそこがいいのである。

そしてスタートとしてはそんな形であっても、いつか二人でこの闇を本当の意味で乗り越えて、真の恋人としての関係を築くこともできるはずだ。
そういう期待はある。
…って、それも甘えかな。

(*1)学校では多少ぐれている面を見せていたりもしたが、実際の彼は率先してチームのために危険を冒すことができ、チームのメンバーにも気配りができる好青年である。
同年齢~年上の女性陣、唯一の男性メンバーであるコータ、子どものありす、分け隔てなく(*2)接している。
いざという時の決断も早い。
欠点は女心に疎いこと。
時に愚かな行動をしてしまうこと。
(8話はそれの最たるもの。銃器の練習という事前準備を怠り、油断から警戒が疎かになり、<奴ら>が押し寄せてきた状況で冷静さを失って、一時的に麗を含めて逃げるという判断ができなかった)
精神的な傷としては、親友の彼女に惚れていたため、親友だった永に対してコンプレックスがあること。
その永を自分の手で殺してしまった罪悪感、後悔、悲しみ。

(*2)事件勃発時、彼は教室にいた麗だけを連れて行こうとした。
事態が緊急のものであると彼が本能的に察知し、誰よりも優先したい人間を守ろうとしたということだと思う。
それだけ彼にとって麗は大事な存在だったということの証明。
話数が進んで9話の時点でこれがどう変化しているのかということを考えてみるのも面白いだろう。
たぶん現状だと
 冴子>麗>>沙耶、静香、ありす、コータ
というところか。
冴子は孝が生きるために彼女の全てを受け入れると告げた存在。
そこにあるのは好意だけではなく情とは無縁の打算も含まれる。
しかし、それだけに彼にとっては好意以外のものも含めて必要としているわけで、重要度は最上位にあると考える。
もちろん彼はチームのリーダーとして全員を大事にしているが、本当に追い込まれて選ばざるを得ないとしたらそういう優先順位になるような気がする。
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